廃屋ログ

ごみ屋敷からの独り言

だれが石丸伸二に投票したのか~データで見る驚きの正体~

 文学研究科修了のザ・文系ではありますが、素人ができる範囲でエクセルの機能のみを使いデータ分析してみました。プロから見ると怪しいところ誤っているところがあるかもしれません。優しく指摘いただけますと助かります。

 結論から申し上げますと、都心・城西・城南・中央線沿線(荻窪国分寺)によく住む、男性・高学歴(大卒以上)・若年の方々が、比較的多く投票していました。石丸氏は、YoutubeやTickTockといったSNSの煽りタイトルの切り抜きショート動画で人気を博したといわれています。一見、いわゆる「B層」、低リテラシー、教育水準の低い方々が投票していたかのように思えるのですが、実は、逆で、世の中ではリテラシーが高いとされている層の人々でした。

石丸伸二+石丸幸人の絶対得票率 都心・城西・中央線沿線(杉並~国分寺)が高め  千代田区	17.94% 中央区	19.08% 港区	16.71% 新宿区	15.16% 文京区	17.44% 台東区	17.03% 墨田区	16.39% 江東区	16.39% 品川区	17.12% 目黒区	17.41% 大田区	15.91% 世田谷区	17.89% 渋谷区	17.07% 中野区	15.80% 杉並区	16.64% 豊島区	15.27% 北区	14.89% 荒川区	15.16% 板橋区	14.70% 練馬区	15.43% 足立区	12.84% 葛飾区	14.22% 江戸川区	14.31% 八王子市	13.79% 立川市	13.83% 武蔵野市	17.10% 三鷹市	16.79% 青梅市	11.47% 府中市	15.27% 昭島市	13.32% 調布市	16.92% 町田市	14.68% 小金井市	16.30% 小平市	15.11% 日野市	15.44% 東村山市	13.73% 国分寺市	16.44% 国立市	15.27% 福生市	12.14% 狛江市	16.31% 東大和市	12.77% 清瀬市	13.71% 東久留米市	13.86% 武蔵村山市	11.13% 多摩市	14.27% 稲城市	16.37% 羽村市	13.05% あきる野市	11.92% 西東京市	15.34% 瑞穂町	10.51% 日の出町	10.89% 檜原村	8.49% 奥多摩町	8.42% 大島町	11.52% 利島村	17.67% 新島村	11.26% 神津島村	11.43% 三宅村	11.64% 御蔵島村	19.21% 八丈町	9.76% 青ヶ島村	14.40% 小笠原村	17.63%

都心・城南・城西・中央線(杉並~国分寺)で得票しているのがわかる

先行研究

 これから、学歴(大卒以上or大卒未満)と年齢(20~40代)を軸に分析していきます。この二軸を用意したのには、もちろん、理由があります。

 投票行動研究において、SES(socioeconomic status / 社会経済状況)が投票行動に影響を与えることが注目されていました。野田昌吾のドイツの先行研究の紹介*1によるならば,ドイツにおいて所得の格差が、政治参加の格差につながっている、その格差はより拡大しているとのことでした。日本の投票行動についても、境家史郎が、80年代においては、教育程度が低い方が投票参加する傾向にあったが、90年代以降、教育程度の高い層の投票参加が進み、教育程度の低い層の投票参加が減退し、その関係が逆転していることを示しました。*2

 社会学・教育社会学においても、日本社会は「大卒」「非大卒」で分断されているという指摘がされてきました*3。第1回SSP調査(2015年)とそれに基づいて出された書籍、数土直紀の『社会意識からみた日本--階層意識の新次元』や吉川徹の『現代日本の「社会の心」 - 計量社会意識論』において、政治参加意識における学歴格差が明らかにされました。第2回SSP調査の報告書を見る限り、傾向に変化はなさそうです。

 実際に、今回の選挙の投票率を見ると、大卒・院卒比率の高い自治体では、投票率が高く、逆に、大卒・院卒比率の低い自治体では投票率が低くくなっています。

主な自治体 檜原村	大卒・院卒比:11.37%	投票率:68.14% 奥多摩町	大卒・院卒比:12.18%	投票率:64.44% 瑞穂町	大卒・院卒比:11.86%	投票率:54.25% 足立区	大卒・院卒比:19.06%	投票率:55.18% 清瀬市	大卒・院卒比:24.91%	投票率:60.99% 北区	大卒・院卒比:28.73%	投票率:61.89% 港区	大卒・院卒比:36.07%	投票率:56.56% 国分寺市	大卒・院卒比:41.29%	投票率:65.65% 文京区	大卒・院卒比:47.76%	投票率:68.33%

外れ値の奥多摩町檜原村を除いて、近似曲線をひいている。都市近郊と農山村に大きな差異があるものと思われる。またグラフからは、島部を除いている。

 もう一つ、年齢を軸にしたのは、出口調査で低い年齢の高い支持が言われていたからです。性別も男性に偏ることがわかっていますが、この分析で使う自治体別データだと明らかにできないと思われるので、所与のものとして扱いました。

分析

学歴

 自治体ごとの石丸氏の絶対得票率と、自治体ごとの国勢調査のデータの卒業者のデータから、石丸人気と学歴の関係を分析しました。

 話題の石丸伸二氏以外に、アディーレ法律事務所の石丸幸人氏も立候補しており、誤って幸人氏を選んだ有権者も少なくないと考えられるので、両者の得票を合算して計算しました。また得票データは、投票率の際の影響を防ぐため、投票者数を母数にした一般的な相対得票率ではなく、全有権者を母数にした絶対得票率に計算しなおしました。

 国勢調査は最新の2021年のものを利用します。

 これがその結果です(人口の少ない島部除く)。縦が石丸氏の得票率、横が大卒・院卒比です。大卒・院卒比が上がれば上がるほど、得票率が上がる関係(相関)がわかります。

千代田区	大卒・院卒比	43.06%	絶対得票率	17.94% 中央区	大卒・院卒比	44.10%	絶対得票率	19.08% 港区	大卒・院卒比	36.07%	絶対得票率	16.71% 新宿区	大卒・院卒比	33.13%	絶対得票率	15.16% 文京区	大卒・院卒比	47.76%	絶対得票率	17.44% 台東区	大卒・院卒比	29.40%	絶対得票率	17.03% 墨田区	大卒・院卒比	29.86%	絶対得票率	16.39% 江東区	大卒・院卒比	32.54%	絶対得票率	16.39% 品川区	大卒・院卒比	38.50%	絶対得票率	17.12% 目黒区	大卒・院卒比	36.58%	絶対得票率	17.41% 大田区	大卒・院卒比	32.95%	絶対得票率	15.91% 世田谷区	大卒・院卒比	38.40%	絶対得票率	17.89% 渋谷区	大卒・院卒比	37.29%	絶対得票率	17.07% 中野区	大卒・院卒比	33.34%	絶対得票率	15.80% 杉並区	大卒・院卒比	40.46%	絶対得票率	16.64% 豊島区	大卒・院卒比	31.91%	絶対得票率	15.27% 北区	大卒・院卒比	28.73%	絶対得票率	14.89% 荒川区	大卒・院卒比	26.94%	絶対得票率	15.16% 板橋区	大卒・院卒比	26.79%	絶対得票率	14.70% 練馬区	大卒・院卒比	33.97%	絶対得票率	15.43% 足立区	大卒・院卒比	19.06%	絶対得票率	12.84% 葛飾区	大卒・院卒比	22.99%	絶対得票率	14.22% 江戸川区	大卒・院卒比	23.47%	絶対得票率	14.31% 八王子市	大卒・院卒比	26.68%	絶対得票率	13.79% 立川市	大卒・院卒比	25.86%	絶対得票率	13.83% 武蔵野市	大卒・院卒比	44.43%	絶対得票率	17.10% 三鷹市	大卒・院卒比	37.43%	絶対得票率	16.79% 青梅市	大卒・院卒比	16.75%	絶対得票率	11.47% 府中市	大卒・院卒比	32.42%	絶対得票率	15.27% 昭島市	大卒・院卒比	24.57%	絶対得票率	13.32% 調布市	大卒・院卒比	35.46%	絶対得票率	16.92% 町田市	大卒・院卒比	31.48%	絶対得票率	14.68% 小金井市	大卒・院卒比	41.19%	絶対得票率	16.30% 小平市	大卒・院卒比	32.81%	絶対得票率	15.11% 日野市	大卒・院卒比	31.48%	絶対得票率	15.44% 東村山市	大卒・院卒比	26.47%	絶対得票率	13.73% 国分寺市	大卒・院卒比	41.29%	絶対得票率	16.44% 国立市	大卒・院卒比	38.34%	絶対得票率	15.27% 福生市	大卒・院卒比	18.55%	絶対得票率	12.14% 狛江市	大卒・院卒比	36.54%	絶対得票率	16.31% 東大和市	大卒・院卒比	23.45%	絶対得票率	12.77% 清瀬市	大卒・院卒比	24.91%	絶対得票率	13.71% 東久留米市	大卒・院卒比	27.13%	絶対得票率	13.86% 武蔵村山市	大卒・院卒比	13.50%	絶対得票率	11.13% 多摩市	大卒・院卒比	33.92%	絶対得票率	14.27% 稲城市	大卒・院卒比	34.35%	絶対得票率	16.37% 羽村市	大卒・院卒比	20.65%	絶対得票率	13.05% あきる野市	大卒・院卒比	18.99%	絶対得票率	11.92% 西東京市	大卒・院卒比	33.12%	絶対得票率	15.34% 瑞穂町	大卒・院卒比	11.86%	絶対得票率	10.51% 日の出町	大卒・院卒比	15.79%	絶対得票率	10.89% 檜原村	大卒・院卒比	11.37%	絶対得票率	8.49% 奥多摩町	大卒・院卒比	12.18%	絶対得票率	8.42% 大島町	大卒・院卒比	16.81%	絶対得票率	11.52% 利島村	大卒・院卒比	31.73%	絶対得票率	17.67% 新島村	大卒・院卒比	17.59%	絶対得票率	11.26% 神津島村	大卒・院卒比	14.56%	絶対得票率	11.43% 三宅村	大卒・院卒比	21.05%	絶対得票率	11.64% 御蔵島村	大卒・院卒比	37.69%	絶対得票率	19.21% 八丈町	大卒・院卒比	16.01%	絶対得票率	9.76% 青ヶ島村	大卒・院卒比	36.30%	絶対得票率	14.40% 小笠原村	大卒・院卒比	27.28%	絶対得票率	17.63%

右肩上がりの正の相関

 これを見ると、学歴が上がると、石丸氏の得票率がまっすぐ上がっていくようです。とてもばらつきが少なく、一直線に近くなっているように見えます。相関関係を明らかにする相関係数*4は約0.92、学歴と得票率の間にとても強い相関を表しています。ばらつかなかったということは23区で強いとか多摩で強いという地域ファクターが、おそらくなかったものと思われます。
 このグラフを見たとき、ふと、思いました。本当は相関関係がないにもかかわらず、ほかの因子によって相関関係があるように見える疑似相関を考えなくていいだろうか、と。日本は年々高学歴化が進んでいるため、年齢と学歴は相関関係があるはずです。石丸氏が若い世代に強い、というように報道されているため、本当は年齢に起因する疑似相関ではないか、と、年齢との関係を調べることにしました。
(工場の品質管理ならともかく、調査者が操作できない社会科学領域において、0.9以上という相関係数は高すぎ、研究のやり方を疑うレベルらしいです)

年齢

 ということで、年齢との関係を分析することにしました。支持率が高い世代を見て、20~40代の人口比によって、絶対得票率は左右されるのか調査します。年齢データは、同じく2021年の国勢調査を使います。

 その結果はこちらです(人口の少ない島部除く)。

千代田区	20代から40代の人口比	47.96%	絶対得票率	17.94% 中央区	20代から40代の人口比	49.31%	絶対得票率	19.08% 港区	20代から40代の人口比	45.72%	絶対得票率	16.71% 新宿区	20代から40代の人口比	46.47%	絶対得票率	15.16% 文京区	20代から40代の人口比	45.02%	絶対得票率	17.44% 台東区	20代から40代の人口比	44.34%	絶対得票率	17.03% 墨田区	20代から40代の人口比	45.39%	絶対得票率	16.39% 江東区	20代から40代の人口比	41.98%	絶対得票率	16.39% 品川区	20代から40代の人口比	46.20%	絶対得票率	17.12% 目黒区	20代から40代の人口比	46.72%	絶対得票率	17.41% 大田区	20代から40代の人口比	42.58%	絶対得票率	15.91% 世田谷区	20代から40代の人口比	43.77%	絶対得票率	17.89% 渋谷区	20代から40代の人口比	47.17%	絶対得票率	17.07% 中野区	20代から40代の人口比	48.09%	絶対得票率	15.80% 杉並区	20代から40代の人口比	44.52%	絶対得票率	16.64% 豊島区	20代から40代の人口比	47.64%	絶対得票率	15.27% 北区	20代から40代の人口比	42.49%	絶対得票率	14.89% 荒川区	20代から40代の人口比	41.86%	絶対得票率	15.16% 板橋区	20代から40代の人口比	41.68%	絶対得票率	14.70% 練馬区	20代から40代の人口比	41.01%	絶対得票率	15.43% 足立区	20代から40代の人口比	38.59%	絶対得票率	12.84% 葛飾区	20代から40代の人口比	38.58%	絶対得票率	14.22% 江戸川区	20代から40代の人口比	40.58%	絶対得票率	14.31% 八王子市	20代から40代の人口比	35.59%	絶対得票率	13.79% 立川市	20代から40代の人口比	39.21%	絶対得票率	13.83% 武蔵野市	20代から40代の人口比	41.97%	絶対得票率	17.10% 三鷹市	20代から40代の人口比	40.97%	絶対得票率	16.79% 青梅市	20代から40代の人口比	32.13%	絶対得票率	11.47% 府中市	20代から40代の人口比	39.25%	絶対得票率	15.27% 昭島市	20代から40代の人口比	36.67%	絶対得票率	13.32% 調布市	20代から40代の人口比	41.29%	絶対得票率	16.92% 町田市	20代から40代の人口比	34.53%	絶対得票率	14.68% 小金井市	20代から40代の人口比	40.94%	絶対得票率	16.30% 小平市	20代から40代の人口比	37.99%	絶対得票率	15.11% 日野市	20代から40代の人口比	38.07%	絶対得票率	15.44% 東村山市	20代から40代の人口比	34.92%	絶対得票率	13.73% 国分寺市	20代から40代の人口比	40.38%	絶対得票率	16.44% 国立市	20代から40代の人口比	37.61%	絶対得票率	15.27% 福生市	20代から40代の人口比	35.59%	絶対得票率	12.14% 狛江市	20代から40代の人口比	39.91%	絶対得票率	16.31% 東大和市	20代から40代の人口比	34.70%	絶対得票率	12.77% 清瀬市	20代から40代の人口比	34.48%	絶対得票率	13.71% 東久留米市	20代から40代の人口比	33.92%	絶対得票率	13.86% 武蔵村山市	20代から40代の人口比	34.86%	絶対得票率	11.13% 多摩市	20代から40代の人口比	35.60%	絶対得票率	14.27% 稲城市	20代から40代の人口比	38.09%	絶対得票率	16.37% 羽村市	20代から40代の人口比	35.12%	絶対得票率	13.05% あきる野市	20代から40代の人口比	31.26%	絶対得票率	11.92% 西東京市	20代から40代の人口比	37.93%	絶対得票率	15.34% 瑞穂町	20代から40代の人口比	33.16%	絶対得票率	10.51% 日の出町	20代から40代の人口比	28.59%	絶対得票率	10.89% 檜原村	20代から40代の人口比	18.47%	絶対得票率	8.49% 奥多摩町	20代から40代の人口比	19.54%	絶対得票率	8.42% 大島町	20代から40代の人口比	26.17%	絶対得票率	11.52% 利島村	20代から40代の人口比	41.30%	絶対得票率	17.67% 新島村	20代から40代の人口比	27.41%	絶対得票率	11.26% 神津島村	20代から40代の人口比	30.65%	絶対得票率	11.43% 三宅村	20代から40代の人口比	28.23%	絶対得票率	11.64% 御蔵島村	20代から40代の人口比	47.92%	絶対得票率	19.21% 八丈町	20代から40代の人口比	26.57%	絶対得票率	9.76% 青ヶ島村	20代から40代の人口比	42.60%	絶対得票率	14.40% 小笠原村	20代から40代の人口比	48.54%	絶対得票率	17.63%

右肩上がりの正の相関

 学歴ほどではないですが、年齢と石丸氏の得票率に強い相関があることがうかがえます。相関係数は、0.83でした。

 

年齢・学歴の相互の影響を消して分析


 そこで、それぞれの影響を消しても、相関関係があるか調べるべます。別の変数を除いた場合の相関係数を偏相関係数といい、これを出してみることにしました。

 したところ以下の結果となり、もとよりは弱いものも、いずれも相関関係があること、学歴との相関関係の方が、年齢との相関関係よりやや強いことがわかりました。

 

得票率と学歴の偏相関係数約0.44

得票率と年齢の偏相関係数約0.34

 

 ということで、報道の通り男性で、調査結果の通り、高学歴であり、若い世代が、石丸氏に比較的多く投票したとみて間違いないようです。

 

P.S.

それにしてもなぜ、日本の世論調査出口調査は、学歴との関係を調べないのでしょうか。疑問でなりません。

*1:野田 昌吾(2015)「誰が投票に行かないのか : 選挙から見た自由民主主義の現在」立命館大学政策科学会 『政策科学』22 (3), 95-114

https://ritsumei.repo.nii.ac.jp/records/5066

*2:境家史郎(2013)「戦後日本人の政治参加― 「投票参加の平等性」 論を再考する―」日本政治学会『年報政治学』 64 巻 1 号 p. 1_236-1_255

https://www.jstage.jst.go.jp/article/nenpouseijigaku/64/1/64_1_236/_article/-char/ja/

*3:

synodos.jp

*4:0に近いほど相関なし、1または-1に近いほど相関あり