文学研究科修了のザ・文系ではありますが、素人ができる範囲でエクセルの機能のみを使いデータ分析してみました。プロから見ると怪しいところ誤っているところがあるかもしれません。優しく指摘いただけますと助かります。
結論から申し上げますと、都心・城西・城南・中央線沿線(荻窪~国分寺)によく住む、男性・高学歴(大卒以上)・若年の方々が、比較的多く投票していました。石丸氏は、YoutubeやTickTockといったSNSの煽りタイトルの切り抜きショート動画で人気を博したといわれています。一見、いわゆる「B層」、低リテラシー、教育水準の低い方々が投票していたかのように思えるのですが、実は、逆で、世の中ではリテラシーが高いとされている層の人々でした。

先行研究
これから、学歴(大卒以上or大卒未満)と年齢(20~40代)を軸に分析していきます。この二軸を用意したのには、もちろん、理由があります。
投票行動研究において、SES(socioeconomic status / 社会経済状況)が投票行動に影響を与えることが注目されていました。野田昌吾のドイツの先行研究の紹介*1によるならば,ドイツにおいて所得の格差が、政治参加の格差につながっている、その格差はより拡大しているとのことでした。日本の投票行動についても、境家史郎が、80年代においては、教育程度が低い方が投票参加する傾向にあったが、90年代以降、教育程度の高い層の投票参加が進み、教育程度の低い層の投票参加が減退し、その関係が逆転していることを示しました。*2
社会学・教育社会学においても、日本社会は「大卒」「非大卒」で分断されているという指摘がされてきました*3。第1回SSP調査(2015年)とそれに基づいて出された書籍、数土直紀の『社会意識からみた日本--階層意識の新次元』や吉川徹の『現代日本の「社会の心」 - 計量社会意識論』において、政治参加意識における学歴格差が明らかにされました。第2回SSP調査の報告書を見る限り、傾向に変化はなさそうです。
実際に、今回の選挙の投票率を見ると、大卒・院卒比率の高い自治体では、投票率が高く、逆に、大卒・院卒比率の低い自治体では投票率が低くくなっています。

もう一つ、年齢を軸にしたのは、出口調査で低い年齢の高い支持が言われていたからです。性別も男性に偏ることがわかっていますが、この分析で使う自治体別データだと明らかにできないと思われるので、所与のものとして扱いました。
分析
学歴
自治体ごとの石丸氏の絶対得票率と、自治体ごとの国勢調査のデータの卒業者のデータから、石丸人気と学歴の関係を分析しました。
話題の石丸伸二氏以外に、アディーレ法律事務所の石丸幸人氏も立候補しており、誤って幸人氏を選んだ有権者も少なくないと考えられるので、両者の得票を合算して計算しました。また得票データは、投票率の際の影響を防ぐため、投票者数を母数にした一般的な相対得票率ではなく、全有権者を母数にした絶対得票率に計算しなおしました。
国勢調査は最新の2021年のものを利用します。
これがその結果です(人口の少ない島部除く)。縦が石丸氏の得票率、横が大卒・院卒比です。大卒・院卒比が上がれば上がるほど、得票率が上がる関係(相関)がわかります。

これを見ると、学歴が上がると、石丸氏の得票率がまっすぐ上がっていくようです。とてもばらつきが少なく、一直線に近くなっているように見えます。相関関係を明らかにする相関係数*4は約0.92、学歴と得票率の間にとても強い相関を表しています。ばらつかなかったということは23区で強いとか多摩で強いという地域ファクターが、おそらくなかったものと思われます。
このグラフを見たとき、ふと、思いました。本当は相関関係がないにもかかわらず、ほかの因子によって相関関係があるように見える疑似相関を考えなくていいだろうか、と。日本は年々高学歴化が進んでいるため、年齢と学歴は相関関係があるはずです。石丸氏が若い世代に強い、というように報道されているため、本当は年齢に起因する疑似相関ではないか、と、年齢との関係を調べることにしました。
(工場の品質管理ならともかく、調査者が操作できない社会科学領域において、0.9以上という相関係数は高すぎ、研究のやり方を疑うレベルらしいです)
年齢
ということで、年齢との関係を分析することにしました。支持率が高い世代を見て、20~40代の人口比によって、絶対得票率は左右されるのか調査します。年齢データは、同じく2021年の国勢調査を使います。
その結果はこちらです(人口の少ない島部除く)。

学歴ほどではないですが、年齢と石丸氏の得票率に強い相関があることがうかがえます。相関係数は、0.83でした。
年齢・学歴の相互の影響を消して分析
そこで、それぞれの影響を消しても、相関関係があるか調べるべます。別の変数を除いた場合の相関係数を偏相関係数といい、これを出してみることにしました。
したところ以下の結果となり、もとよりは弱いものも、いずれも相関関係があること、学歴との相関関係の方が、年齢との相関関係よりやや強いことがわかりました。
得票率と学歴の偏相関係数:約0.44
得票率と年齢の偏相関係数:約0.34
ということで、報道の通り男性で、調査結果の通り、高学歴であり、若い世代が、石丸氏に比較的多く投票したとみて間違いないようです。
P.S.
それにしてもなぜ、日本の世論調査や出口調査は、学歴との関係を調べないのでしょうか。疑問でなりません。
*1:野田 昌吾(2015)「誰が投票に行かないのか : 選挙から見た自由民主主義の現在」立命館大学政策科学会 『政策科学』22 (3), 95-114
https://ritsumei.repo.nii.ac.jp/records/5066
*2:境家史郎(2013)「戦後日本人の政治参加― 「投票参加の平等性」 論を再考する―」日本政治学会『年報政治学』 64 巻 1 号 p. 1_236-1_255
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nenpouseijigaku/64/1/64_1_236/_article/-char/ja/
*3:
*4:0に近いほど相関なし、1または-1に近いほど相関あり