廃屋ログ

ごみ屋敷からの独り言

2021年総選挙・ドイツ方式で開票したらどうなった?(阻止条項あり!)

 先日、こんな記事が書かれました。小選挙区比例代表で二票あるけれど、ドイツと日本では違うんですね。

note.com 日本のやり方を小選挙区比例代表連用制、ドイツのやり方を小選挙区比例代表併用制、これをドイツでは「個人化された比例代表制」(Personalisierten Verhältniswahl)と呼びます。

 ドイツのやり方、ざっくり言うと比例代表でだいたいの議席数を決めて、それより多く小選挙区で当選した政党には超過分を与えるという、選挙によって総議席数が変動する仕組みです。

 原さんが、この方式で今回の日本の総選挙の結果を試算したのですが、ドイツをはじめ比例代表制を取る大陸ヨーロッパ諸国にあって日本にない制度が一つ抜け落ちています。それが、「阻止条項」です。ワイマール体制下での小党乱立が、議会政治を不安定にしナチス政権を招いたという反省から、一定の得票率を取らないと比例では議席を与えないよ、という制度で、ドイツでは5%以上と決まっています。なお、比例代表で5%を切っても小選挙区で1位になった議席は獲得できます。

 ということで阻止条項ありで試算してみましょう。

 まず、総選挙での比例得票を見ます。数値はNHKかどっかの速報サイトから持ってきました。N国などはどうせ今回の分析は出てこないので、持ってきた以下の政党の得票から得票率を出しているので、実際とは少し違います。

政党名 得票数 割合
<与党>
自由民主党 19,914,883 35.21%
公明党 7,114,282 12.58%
<ゆ党>
日本維新の会 8,050,830 14.23%
<野党>
立憲民主党 11,492,090 20.32%
日本共産党 4,166,076 7.3%
国民民主党 2,593,391 4.58%
れいわ新選組 2,215,648 3.92%
社会民主党 1,018,588 1.80%

そのまま試算すると

 さっそく、阻止条項と超過議席の影響が出てきました。れいわ新選組と国民民主党社会民主党は、5%を越えないので比例議席なし、他方で、自由民主党は比例議席以上の数の小選挙区で勝利したため6議席増になりました。また、国民民主党社会民主党もそれぞれ、小選挙区で勝っているので、それぞれ超過議席を獲得しています。
 ドイツの方式でも、自由民主党の超過議席を防ぐという意味で、野党共闘には意味がありそうです。

f:id:high_octane:20211114141141p:plain

政党名 得票数 割合 比例議席 超過議席 議席
<与党>         254
自由民主党 19,914,883 35.21% 193 6 189
公明党 7,114,282 12.58% 65 0 65
<ゆ党>         66
日本維新の会 8,050,830 14.23% 74 0 74
<野党>         150
立憲民主党 11,492,090 20.32% 105 0 105
日本共産党 4,166,076 7.3% 38 0 38
国民民主党 2,593,391 4.58% 0 6 6
れいわ新選組 2,215,648 3.92% 0 0 0
社会民主党 1,018,588 1.80% 0 1 1

比例代表の計算は、ドイツではサン=ラグ方式が用いられているようなので、それを使います。日本はドント式です。

もし選挙協力があったなら

 5%の阻止条項がある状態で、それを下回る可能性のある政党がそのまま選挙に臨むとは思えません。立憲民主党と国民民主党、れいわ新選組社会民主党が統一名簿を作成すると、阻止条項を乗り越えられるので、そのケースで考えてみます。

f:id:high_octane:20211114143434p:plain

政党名 得票数 割合 比例議席 超過議席 議席
<与党>         237
自由民主党 19,914,883 35.21% 164 25 189
公明党 7,114,282 12.58% 58 0 58
<ゆ党>         66
日本維新の会 8,050,830 14.23% 66 0 66
<野党>         177
立憲民主党+国民民主党 14,085,481 24.90% 116 0 116
日本共産党 4,166,076 7.3% 34 0 34
れいわ新選組+社会民主党 3,234,236 5.72% 27 0 27

 なんかもっとバランスが取れた議席構成になりました。自公で過半数を割る得票でありながら、小選挙区の超過議席で補う厳しい勝利。非自民・非共産で過半数取れそうですが、維新とれいわが一緒に政権に入ることは考えづらい組み合わせではあります。