廃屋ログ

ごみ屋敷からの独り言

2023年、データで見る杉並の真実

 2023年の杉並区議会議員選挙、自由民主党の候補が大量落選、他方、岸本区長の推す候補が、多数当選して話題になりました。
 世の中としては、岸本区長と市民の活動が投票率を上げ、この選挙結果になったと信じられていますが、本当にそうだったのか検証してみます。

自由民主党の一人負け・都民ファーストの会/日本維新の会投票率への貢献

 投票率が上がったことにより、当落ラインが上がり、自由民主党候補が落選したという言説を見ました。それは本当なのでしょうか?

 まず、投票率ですが、今回、4%程度上がっています。各陣営ごとの絶対得票率がどのように変化したのか、まとめてみました。

自由民主党	-1.73%
公明党	0.07%
都民ファーストの会	2.23%
日本維新の会	1.50%
倉本美香	1.19%
井口絵美	0.83%
田中朝子	0.54%
岩田生真	-0.08%
立憲民主党	0.57%
日本共産党	-0.54%
杉並・生活者ネットワーク	-0.43%
れいわ新選組	1.27%
緑の党グリーンズジャパン	0.70%
奥山妙子	0.24%
松尾百合	-0.16%
自治市民	0.25%
都政を革新する会	-0.14%
堀部康	-0.24%

党派名 2019年・得票数 2022年・得票数 得票数差 2019年・絶対得票率 2022年・絶対得票率 絶対得票率差
自由民主党 50,319.536 42,259.023 -10,764.513 10.69% 8.96% -1.73%
公明党 20,568.117 20,947.49 +37,9.373 4.37% 4.44% +0.07%
都民ファーストの会   10,528 +10,528   2.23% +2.23%
日本維新の会 2,735.351 9,793.239 +7,057.888 0.58% 2.08% +1.50%
倉本美香   5,612 +5,612   1.19% +1.19%
井口絵美   3,929.469 +3,924.469   0.83% +0.83%
田中朝子   2,549.52 +2,542.52   0.54% +0.54%
岩田生真   2,506 +2,506 0.61% 0.53% -0.08%
立憲民主党 25,459.073 28,213.76 +3,853.335 5.41% 5.98% +0.57%
日本共産党 20,050 17,564 -2,486 4.26% 3.73% -0.54%
杉並・生活者ネットワーク 8,167 6,134 -2,033 1.74% 1.30% -0.43%
れいわ新選組   5,966 +5,966   1.27% +1.27%
緑の党グリーンズジャパン   3,320 +3,320   0.70% +0.70%
奥山妙子 2,117 3,261 +1,144 0.45% 0.69% +0.24%
松尾百合 3,828 3,096 -732 0.81% 0.66% -0.16%
自治市民   1,199.626 +1,199,626   0.25% +0.25%
都政を革新する会 3,275 2,632 -643 0.70% 0.56% -0.14%
堀部康 4,386 3,252 -1,134 0.93% 0.69% -0.24%

*1

 絶対、得票率とは、有権者のうちどれぐらいの人がその党派に入れたのかという割合ですが、自由民主党だけ大幅に減っていることがわかります。他方で区政与党(国政野党)だけでは、1.7%程度しか投票率が上がっておらず、都民ファーストの会日本維新の会投票率への貢献は大きいものでした。
 3%の人が動くと世の中変わると言いますが、都民ファーストの会日本維新の会が3%以上絶対得票率を伸ばして、世田谷区はどう変わってしまうのでしょうか?

 自民党の各候補の得票数を見てみました。総じて減少傾向です。前回よりも候補者を減らしたにもかかわらず、得票を減らすことになりました。前回の最下位当選が2,020票であることを勘案すると、小川宗次郎氏以下は、前回並みの当落ラインでも落選したことになります。
 推測ですが、先の区長選挙で、岸本氏が現職を破り、自由民主党の各議員が首長への近さを失ってしまったことが、大きな影響を与えたのではないか、と思います。また、前区長派・反前区長派の対立が、しこりを残した部分もあるのかもしれません。

候補者名 2019年 2023年
大和田 伸 6,003 5,436 -567
脇坂 達也 4,727 5,079 +352
藤本 直也 3,063 2,983 -80
吉田 愛 2,718 2,921 +203
渡辺 友貴 2,762 2,860 +98
矢口 泰之 2,369 2,765 +396
浅井 邦夫 2,712 2,553 -159
井口 かづ子 2,844 2,435 -409
小川 宗次郎 2,298 1,999 -299
大熊 昌巳 2,022 1,942 -80
松浦 威明 2,970 1,796 -1,174
国崎 隆志 2,387 1,761 -626
今井 洋 2,035 1,723 -312
大泉 泰政 2,020 1,722 -298
井原 太一 2,937 1,580 -1,357
葉梨 俊郎 1,826    
庄司 玉緒 1,789    
田中 佳代 1,533  
榑松 幸代 1,304    

2019年立憲民主党のポテンシャル

 議席を伸ばした立憲民主党ですが、そのポテンシャルは既に前回、2019年の区議選の時に秘めていたものでした。

2019年・当落 2019年・党派 2019年・候補者 2019年・得票数 2023年・当落 2023年・党派 2023年・候補者 2023年・得票数 得票数差
立憲民主党 樋脇 岳 5,242 立憲民主党 樋脇 岳 3,844 -1,398
立憲民主党 関口 健太郎 5,023 不出馬       -5,023
立憲民主党 山本 明美 4,336.425     山本 明美 1,867 -2,469.425
立憲民主党 川野 孝章 4,134 不出馬       -4,134
立憲民主党 太田 哲二 3,758   立憲民主党 太田 哲二 2,094 -1,664
  あたらしい党 前山 直子 1,654 立憲民主党 前山 直子 2,942 +1,288
  自由党 松本 浩一 1,311.648 立憲民主党 松本 浩一 2,839.76 +1,528.112
        立憲民主党 安田 真理 6,532 +6,532
        立憲民主党 赤坂 珠良 4,189 +4,189
        立憲民主党 寺田 陽香 3,906 +3,906
    合計(立憲民主党のみ) 22493.425     合計(立憲民主党のみ) 26346.76 +3,853.335
    合計 25459.073     合計 28213.76 +2,754.687
            2019年合計→2023年立憲民主党のみ   +887.687

  前回の区議選でも、立憲民主党候補(5名)が、安定的に上位当選していることがわかります。基本的には前回取得した得票数をもとに、候補者を増やし、票をうまく分け合って、候補者を増やしました。

 関口さんが都議選に転出、川野さんが引退して空いた9000票、現職・樋脇さんから1300票回して、新人を当選させています。特筆しないといけないところは、前区長派で離党した山本さんから2400票、前区長派の太田さんから1600票あまり票を回収し他候補に分配、落選に追い込んでいることです*2。街頭活動などで岸本区長と行動をともにすることで、立憲民主党が区長派であること、その中でだれが本当に区長派なのか支持者にはっきりさせたことが、大きく効果を挙げているように見えます。

 地方選挙は、単記非移譲式大選挙区制の為、政党名より個人名の影響が大きいとされます。刺客を立てたとしても、相手の議員は個人票を持っているので、倒すことができないというのが一般的です。しかし、杉並区の立憲民主党については政党名のラベルが大きな意味を持っていることがわかりました。

まとめ

 ここまでをまとめてみました。

 杉並区議選挙の経験から言えるのは、党の旗を立ててしっかり地方選挙をたたかっていくことが大切だ、ということではないでしょうか?今回の統一地方選挙、都内の首長選挙でもこれまでの自公との相乗りを離脱し、独自候補を擁立する自治体が多くありました。

 党の綱領に則り、国政で取り組んでいる姿勢と連動させていくことが大切だと思います。今回当選した立憲民主党の議員達も、西荻窪の再開発反対の運動に加わり、国政での党の姿勢が地方でも貫かれるということを明確にしました。

 投票率を見るともっと伸びしろがあると思います。昨年の参院選投票率は53.18%でした。まだ、10%近く差があります。この中には、国政選挙では野党に投票するが、地方選挙では棄権してしまう人がいるのではないでしょうか。国政との連携、イシューとの連携を強めていくことが大事だと思います。

*1:コピーしやすかったので、政治山というサイトから持ってきています。無所属は私の気になった候補のみ記載しています。参政党はみんなの党だった人が当選しました。党籍が変わっていて影響を見るのが難しいので外しました。都政を革新する会離党組・結芝・新城両氏と後継の小林氏についてまとめて書きづらかったので省いていますが、得票率はマイナスです。

*2:とはいえ、太田氏の落選は投票率上昇による当落ライン上昇の結果であり、前回の当落ラインでは当選可能。また、現職、樋脇氏も得票を同程度減らしていることから、あまり、前区長派だからという側面は薄いかもしれません